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無用の長物、会社員のプライド

抜本的な組織改革の最大の阻害要因

2005/04/17

経営再建中の大手スーパーの会長と社長が決まったようだ。会長は外資系自動車メーカの前東京支社長、社長は外資系コンピュータメーカの日本法人社長ということで、同社の新しい経営陣のほとんどが社外から招いた人材になったらしい。

2005/04/16の日本経済新聞は11面の記事で「今回招かれた二十人程度の専門家が、プライドが高いといわれるダイエー社員と連携できるか、と危ぶむ声もある。(中略)外部からの人材が活動を開始する中で、生え抜き社員の間にも危機感は徐々に高まりつつある」と書いている。

これでいったい何度目になるのか、もう数えることもできない同社の経営再建で、本当に生え抜き社員の間に危機感が高まっているのかははなはだ疑問だが、生え抜き社員のプライドが社外からの人材が組織改革を進めるときのもっとも根本的な障害になることは間違いないだろう。

経営再建を進めている企業の中には、抜本的な組織改革が必要な場合が多いようだが、そのとき、特に部長以上の管理職層のプライドほど邪魔になるものはない。僕も過去に在籍した会社で、部長以上の管理職層のプライドがもたらす弊害を目の当たりにしている。

伝統的な年功序列制度下で部長以上になっている年齢層の人々は、自分たちが仕事をしてきた環境を相対化することは、年齢的にもはや不可能である。それどころか、会社の繁栄を中核となって築いてきたことに、強いプライドさえ持っている。そのプライドはあまりに強いために、社外の人間にそのプライドの存在意義を否定されればされるほど、かえって強まってしまうという性質をもっている。

彼ら生え抜き社員の部長以上の管理職層は、組織に埋もれている暗黙知のかたまりのような存在なので、そう簡単に配転したり降格したりするわけにはいかない。社外からやってきた新しい経営者たちが、彼らのもっているノウハウを会社の再建に生かすべきだと考えるのも無理はない。

しかし、この大手スーパーしかり、某化粧品メーカしかり、某自動車メーカと、同じグループのトラックメーカしかり、生え抜き社員のプライドがいかに組織の抜本的な改革の足を引っ張るか、学ぶべき前例はたくさんある。フランス資本の自動車メーカが再建した日本の自動車メーカなどは、むしろ例外的な成功例と考えるべきだろう。

会社の再建を託された経営者たちは、部長以上の管理職層のプライドがいかに組織改革の阻害要因となるか、このことについての認識が甘すぎると言わざるをえない。部長レベルを同じ組織の位置に温存したままで、組織改革をできると考えるのは間違いなのだ。

彼らの生活を守るためにも、降格までする必要はさすがにないが、彼らのプライドが「治療不可能」なものである以上、社内での発言力を弱めるための人事は考えるべきなのではないか。たとえば、自分たちの腹心にあたる部下が一人もいない部署へ異動させるなどである。そうすることによって、現場を仕切っている課長以下のクラスの社員に発言の機会が与えられ、経営者が現場と直接対話するチャンスが生まれてくる。

おそらく先にあげたような企業では、部長以上の管理職層のプライドがもたらす弊害を過小評価しており、彼らの発言力を弱める対策をまったく打っていないのだろう。そうである限り、僕はこれらの企業の抜本的な組織改革は不可能だと考える。

それを証拠に某化粧品メーカでは再建中もきわめて巧妙な粉飾会計が続けられていたことが分かったし、某トラックメーカでは最近のリコール申請が半年も遅れていたことが露呈した。

このWebサイトでは以前から繰り返し主張しているように、そもそも会社員は、自分の仕事のスタイルにプライドなど持ってはいけないのだ。会社員は客観的に測定できる能力やスキルにプライドを持ってもよいが、一つの組織の中での自分の仕事のスタイルには絶対にプライドなど持ってはいけない。

会社員の仕事は基本的に、同程度の能力やスキルをもつ他の人材によって代替可能なものである必要がある。代替可能ということは、かんたんに言うと「引継ぎ可能」ということだ。

とても他人に引き継げないような仕事のやり方をしている会社員は、別にその人独自の能力を発揮しているわけでも何でもない。単に非合理的で、効率が悪く、第六感に頼った、行き当たりばったりの乱数的な仕事のやり方をしているだけのことなのだ。

ところが世間の会社員のほとんどが、自分の能力やスキルレベルではなく、自分独特の計画性のない即興演奏に変なプライドをもってしまっている。企業組織そのものが大きな外的な環境変化にさらされない限り、このような非効率な仕事のスタイルは、組織全体としての合理性にうまく吸収される。それだけに、一人ひとりの社員の自分の仕事のスタイルに対するプライドは、ほうっておくとどんどん強化される方向に進む。

定期的に外部から人材を入れて、しかも自分たちの仕事のスタイルに対するプライドを維持できない程度の規模で外部から人材を入れている会社なら、この種のプライドの弊害は長期的に弱められる。しかしそうでない会社では生え抜き社員の気づかない間に、このプライドは致命的なまでに強まってしまう。「致命的」と言ったのは、いざ組織としての変化を求められたときに、もはや変化に対する拒絶反応しか示せなくなるほど、このプライドが強くなってしまうという意味である。

すべての会社員は、自分自身に対するプライドの持ち方を、仕事のスタイルから客観的に測定可能な能力・スキルへシフトしていかなければ、組織改革のお荷物になってしまうことを自覚しなければならない。



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